【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
 このロゼア大陸には魔物が住んでいる。そのため、魔物が王国内に侵入してくることも多々あったのだ。まぁ、それを防ぐために聖女の力を使った結界を四方に張ってあるのだが。魔物は光の魔力を嫌うため、聖女の力は魔物除けにぴったりだったのだ。

「……父上、それは何処の結界でしょうか?」
「王都に一番近いところだな」

 パーシヴァルの問いに、父はそう言葉を返す。……王都に近い。それはつまり、魔物が侵入して来れば被害がとても大きいということではないのだろうか。その考えに至ったのはルーシャンだけではなかったようで。パーシヴァルは「……被害は」と目を瞑って問いかけていた。

「今のところ、被害はない。ただ、魔物が王国内に侵入したというのは間違いないらしい」

 そこまで言うと、父はパーシヴァル、ルーシャン、アルバートの順番で顔を見る。その後「……お前たち、魔物退治に、行けるな?」と尋ねてきた。いや、違う。これは尋ねているのではない。半強制的なのだ。

「俺も行きたいが……生憎、家臣に『年齢を考えろ!』と言われちまってな」
「そりゃそうですよ」

 父の言葉に、アルバートがそう言葉を返す。実際、父はもう五十近い年齢なのだ。見た目はかなり若々しいが、肉体的な衰えはあるだろう。それが分かるからこそ、ルーシャンは何も言わなかった。

「……父上。ここは、俺たちに任せてください」

 何も言わないルーシャンに対し、パーシヴァルはそう言う。その後、彼は「ルーシャンも、アルバートも、いいな?」と問いかけてくる。だからこそ、ルーシャンは少ししてから頷いた。迷う気持ちはある。しかし、父に教えられてきたのだ。王族は、王国のために死ねと。

「……そうか。頼もしいな。いろいろと準備があるからな。明日の早朝に、向かってもらう。今日は仕事をすべてキャンセルして、明日に備えるように」

 その言葉で場を締めくくると、父は部屋を出ていく。その背中を見送れば、部屋に残されたのは三人の王子とその従者のみ。
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