【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
(……そうよ。私、未亡人になりたくないのよ)

 きっと、そうに決まっている。若くして未亡人になどなったら、周囲から腫物扱いされるじゃないか。それに、死ぬのならば自分と離縁してから死んでほしい。……なんて、不謹慎かもしれないな。心の中でそう思いながら、ドロシーは薬草のストックをチェックした。……大丈夫。まだ、ストックはある。

「時間がかからないもので行きましょう。……回復能力がある程度高くて、数が作れるものとなれば……」

 自身が作り上げたレシピの数々とにらめっこをして、今の状況に最も適したものを探し出す。そして、そのレシピを開き必要な薬草を棚から取りだした。

(……無事、帰ってきてなんて、私じゃないわ)

 自分自身の気持ちが分からない。だから、苦笑を浮かべてしまう。そんなことを考えながら、ドロシーは調合に移った。ルーシャンが来る時間は予測できない。そのため、スピード勝負になる。それに、ドロシーにだってプライドがあるのだ。薬学と付き合ってきた日々。調合を勉強した日々。それが築き上げてきたプライドを、こんなところで崩したくなかった。

「やるわよ」

 まずは、薬草を煎じるところから――。

 自身に言い聞かせるようにそう呟き、ドロシーは調合に移った。ルーシャンが来るまでの数時間、ずっと薬草に向き合っていた。
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