【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……ねぇ、リリー」
ポーションの詰まった箱を持ち、ルーシャンの待つ応接間に向かいながら、ドロシーは後ろを歩くリリーに声をかけた。その言葉を聞いたリリーは「どう、なさいましたか?」と静かに問いかけてくる。なので、ドロシーは「ルーシャン殿下、無事に生きて帰ってきてほしいわね」と小さな声で告げる。
「……お嬢様」
「あっ、勘違いしないで。私、未亡人になりたくないだけよ」
プイっと顔を背けながら、ドロシーはそう告げる。リリーはドロシーの父から事情を聴いているらしく、ドロシーの言葉に特別反応を示すことはない。ただ「……そうで、ございますね」と言葉をくれるだけだ。
(……そうよ、そうに、決まっているわ)
どうして、そこまで自分にそう言い聞かせるのか。それは、ドロシー自身にもよくわからない。本当に未亡人になりたくないだけなのか。はたまた……本当は、ルーシャンに好感を抱き始めているのか。
(なんて、それはないわね。私は男性が苦手なのよ)
怖いわけではない。出来れば、関わりたくないだけ。今まで家族や使用人たち以外の男性を遠ざけてきた。男性はドロシーの容姿しか見ない。そんな奴に自分の心など捧げてたまるか。そう、思い続けていたのに。
(……ルーシャン殿下は、変よね)
ドロシーが言うのもなんだが、ルーシャンは変だ。ドロシーの容姿に見惚れない。それどころか、ドロシーの調合という趣味に興味を持った。……こんな人、これから先現れるだろうか?
(そんなの、関係ないじゃない。私は、私たちは一年後に円満離縁する。それだけよ)
心の中に芽生えた意味の分からない感情をかき消すかのように、ドロシーは首を横に振った。その様子を、リリーはどう見たのだろうか。彼女は小さく「……お嬢様」と呟くだけだ。その声は淡々としており、何の感情も宿していないようにも感じられた。
ポーションの詰まった箱を持ち、ルーシャンの待つ応接間に向かいながら、ドロシーは後ろを歩くリリーに声をかけた。その言葉を聞いたリリーは「どう、なさいましたか?」と静かに問いかけてくる。なので、ドロシーは「ルーシャン殿下、無事に生きて帰ってきてほしいわね」と小さな声で告げる。
「……お嬢様」
「あっ、勘違いしないで。私、未亡人になりたくないだけよ」
プイっと顔を背けながら、ドロシーはそう告げる。リリーはドロシーの父から事情を聴いているらしく、ドロシーの言葉に特別反応を示すことはない。ただ「……そうで、ございますね」と言葉をくれるだけだ。
(……そうよ、そうに、決まっているわ)
どうして、そこまで自分にそう言い聞かせるのか。それは、ドロシー自身にもよくわからない。本当に未亡人になりたくないだけなのか。はたまた……本当は、ルーシャンに好感を抱き始めているのか。
(なんて、それはないわね。私は男性が苦手なのよ)
怖いわけではない。出来れば、関わりたくないだけ。今まで家族や使用人たち以外の男性を遠ざけてきた。男性はドロシーの容姿しか見ない。そんな奴に自分の心など捧げてたまるか。そう、思い続けていたのに。
(……ルーシャン殿下は、変よね)
ドロシーが言うのもなんだが、ルーシャンは変だ。ドロシーの容姿に見惚れない。それどころか、ドロシーの調合という趣味に興味を持った。……こんな人、これから先現れるだろうか?
(そんなの、関係ないじゃない。私は、私たちは一年後に円満離縁する。それだけよ)
心の中に芽生えた意味の分からない感情をかき消すかのように、ドロシーは首を横に振った。その様子を、リリーはどう見たのだろうか。彼女は小さく「……お嬢様」と呟くだけだ。その声は淡々としており、何の感情も宿していないようにも感じられた。