玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱

4月1日、
4年間の楽しかった大学生活を終え、
今日から新社会人が始まる


4年生の夏休みに3社から内定を貰えていた私は、その中でも
第一志望の大手チョコレートメーカーを選び入社を希望させて頂いた。



喫茶店でアルバイトをするまでは、
接客やサービス業は考えていなくて、
大学で専攻していた外国語が活かせる
場所を選ぶ予定だったけど、
マスターに出会いそこに
囚われなくてもいいかなと思い
色々な企業を見学したのだ



すごい人の数‥‥‥


大手だけあり、
全国にも海外にも多数の支社や
工場がある為、入社式に集められた新社会人だけで100名以上は
いそうな気がする。


お手洗いに行ってから会場に来たら
席が思いの外埋まっていて、後ろの方は
座れず仕方なく前の方の隅に座った。



すごい‥‥‥
みんなもう隣同士や前後で
話して仲良くなってる。
どうしよう‥出遅れたかもしれない


『あの、隣いいですか?』


「えっ?あ、はい勿論です。」


声をかけられた相手の方を向くと、
私と違って、とても綺麗な大人っぽい
女の子で、同性ながら見惚れてしまった


同い年なのに既にこの差が出来てて、
自分なりに大人っぽくしてきたつもりが
全然子供っぽいことに気付かされる



『私、犬塚 菖蒲 
(いぬづか あやめ)よろしくね。』


「井崎 霞です。
 2人ともお花の名前が入ってまね。
 こちらこそよろしくお願いします。」


サラサラなストレートのロングヘアの
彼女は、私がそう言うと
面白そうに笑った


『ほんとだ!
 これも何かの縁かもしれないね。
 知り合いがいないから
 緊張してたけど、
 井崎さんの挨拶で緊張がとけたよ。』


「私も緊張してたので、
 嬉しかったです。」


私たちは式が始まるまで大学やどの辺に
住んでるのとか色々話し合い、
呼び方も名前で呼び合おうって決めた。


良かった‥‥
この人数でひとりぼっちは流石に
寂しいから話しやすい人が
同期の知り合いにいてくれて。


大学でも友達はいた方だし、
海外文化サークルでも楽しんだけど、
大学生から社会人となると、
友達作りから雰囲気が違って構えてしまう


『お集まりの皆様、そろそろ⚪︎何度
 入社式を始めたいと思いますので、
 着席後静かにお待ちください。』


司会の方の進行のもと
壇上で社長の挨拶が始まり、
各部署の責任者が順番に挨拶や部署の
アピールポイントなどを話していく


部署かぁ‥‥‥
入社したけど、そこまでちゃんと
考えていなかった。


総務、経理、人事、営業、経営企画、
秘書、海外事業、研究、開発、
CSと部署が沢山書かれた
パンフレットに目を通してみる


自分がここで何をしたいかなんて、
まだ全然分からない。
菖蒲は決まってるのかな?
後で時間があったら聞いてみよう‥‥


『次は人事課主任、
 筒井さんお願いします。』


えっ?
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