玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
「痛っ!!」

運転席から筒井さんが私の鼻を
摘むと声を出して笑っていた


それから休憩しながら、お酒などを
買い足したりして2時間くらい
走ると見慣れてきた光景に
記憶がどんどん蘇ってくる


5月の時と違って、
紅葉はまだそこまで色付いてないものの
そこはやっぱり緑が綺麗で
素敵な場所で、湖の近くに車を泊めると
外に出て秋の空気を思い切り吸い込んだ


「筒井さん‥‥綺麗ですね」


車にもたれて
子供みたいにはしゃぐわたしの
顎を筒井さんが捉えると、
唇に軽く触れたキスに
一気に顔が熱くなった


な、なんでここでキス?


一気に恥ずかしくなり固まってると
もう一度今度は深く唇を塞がれて
舌を絡め取られていく


道路からは車の影になっていて
見えないものの、腰を引き寄せ
られてもっと深く落とされるキスに
立っていられなくなりしがみついた



『‥‥お前が足りない。』


えっ?


一度離れた唇がもう一度触れると
筒井さんが私を腕の中に抱き締めた


余裕そうな筒井さんに比べて
立っていられない私は、思いっきり
筒井さんにもたれかかってしまう


先週は会えなかったから確かに
久しぶりだけど、突然過ぎて
恥ずかしくなってきた


「筒井さん?」


『ん?もう少しだけいいだろ?
 まだ時間も早いから。』



湖の写真を撮る私を後ろから抱き締め
てくれる温もりを感じながら、
筒井さんと湖をバックに写真を撮った



『お疲れ!霞ちゃんも待ってたよ!』


別荘に到着をした私達の元に
蓮見さんが来てくれて、お酒や荷物を
一緒に運んでくれた。


『またえらく買い込んだな?』


『そうか?これでも足りるか
 心配だけどな。』


前回も思ったけど、ほんとに
私以外みんなお酒が強いから、
これを飲みきっちゃうのが凄すぎる


私は前回と同じでアルコールが弱めの
飲み物を筒井さんが選んでくれたから
それでじゅうぶん。


「亮さん、古平さんこんにちは!」


『井崎さん待ってたよー。
 今回も女子がいて嬉しい!』


古平さんに抱き付かれると、
亮さんが少しだけ溜め息を吐いたあと
私の頭を撫でてくれた。


『あ、滉一!亮が霞ちゃんに
 手を出してる!!なんで俺の時だけ
 叩くんだよ?おかしくない?』


ギャーギャー喚く蓮見さんを
無視して別荘の中に入る筒井さんに
おかしくてみんなで笑った


うん‥‥
こんな風にここでは過ごしたい。
何もかも今は忘れて‥‥。
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