玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
『では行きますか!!』


前回同様、トレーニングウェアに着替えてから、芝庭でストレッチを入念にし、
マウンテンバイクに跨った


久しぶりだからワクワクする。
運動が元々好きだし、体を動かせると
気持ちいいから嬉しいな。


全身黒のトレーニングウェアに
サングラスをかけた筒井さんが
隣に来ると、私にヘルメットを
被せてくれてキュッと顎ひもを
調節してくれた


「ありがとうございます。
 また20キロ行かれるんですか?」


『そうだな。お前も無理しない
 程度にな。』


「はい。」


スーツや私服と違って、
体のラインがよくわかるウェア姿は
なかなか見られないから、新鮮で
とても素敵だ‥‥


私も体力があったら筒井さんと
一緒に走れるのにな。


『はい、そこ!!
 いちゃついてないで行くぞ!!』

ドキン


蓮見さんに呼ばれると筒井さんは
メットの上から頭をポンポンとしてくれると、ロードバイクに跨りみんなと
行ってしまった


なんか‥‥凄い優しい気がする。


普段から優しいんだけど、みんなの
前だとこういうことしなかったのにな‥


『井崎さん私たちも行こう!
 前回と同じコースで行く予定だから
 無理そうだったら自分のペースで
 ゆっくり来てね。』


「はい!」


少し冷たい風を感じつつも、
坂を下り生い茂る木々のトンネルを
くぐり自然の中を駆け抜ける


都会は便利でなんでもあるけど、
こんなふうに自転車で止まらず
走れることって難しい。


信号も、人も車も多いけど、
こんなに開けた景色は見られない。


筒井さんのことで不安があるけど、
部屋でウジウジしてるより、
こうして開放感がある世界で
羽を伸ばせてる今の方が
私にはよかったと思う


下まで降りて古平さんと写真を撮り
少しだけ休憩をしてから、
また広い湖を一周して楽しんだ


『ハァ‥ハァ‥あー気持ちいい!!』


「私足がプルプルしてます。」


最後の地獄の坂道を登りきり
古平さんとまた芝生に寝そべった


呼吸も苦しいし体はバテバテだけど、
やり切った後の達成感はすごいある。


それでも運動不足なのは確かだから
ランニングだけじゃなく、ヨガとかも
やってみようかな‥‥


『先にシャワー行ってくるね。』


今だに大の字で寝転ぶ私は
ゆっくりと流れる雲をぼんやりと
眺めながら古平さんを見送ると
考えてはいけないことを考えた


来年はもう筒井さんはここには
いないかもしれない‥‥って。


私も来られるかも分からないし、
この貴重な景色を目に沢山
焼き付けておこう‥‥
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