玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
飲み過ぎたみなさんに、
卵雑炊を作ってあげると、
土鍋にいっぱい作ったのに、
あっという間になくなってしまい
驚いた。


「今回も釣りに行くんですか?」


後片付けを亮さん達がしてくれ、
窓を開けて簡単に掃除を済ませてから
外に集合させられた


筒井さんと亮さんは向こうで
煙草を吸っていたので、
蓮見さんに聞いてみたのだ


今日は普通の服でいいって
言われたけどどこに行くんだろう‥


『今日はクラフト体験をしに
 行くんだよ。』


「クラフト?それって何か
 作るってことですよね?」


『うん、そうだよ。
 予約してあるから、みんなで
 毎年色々使ってるわけ。
 今年は革の工房に行くよ。』


やったことないし、工房なんて
行ったこともないからすごい楽しみに
なってきた。


『去年はガラス工房に行ったし、
 その前はお皿の絵付けも
 やったかな。井崎さん工作得意?』


「どちらかというと苦手ですが、
 簡単なものでも作れたら嬉しいので
 楽しみです。」



アウトドアだけじゃなくて、
みんなで記念に何かを作るのもいいな。


『じゃあ行こうか。
 2台で行くから霞ちゃんは
 あっちがいいでしょう?』


「えっ?そんな、私はどっちでも。」


『いやいや、後でブツブツ文句
 言われるの嫌だからあっちね。
 アイツ意外にねちっこいから。
 亮、そろそろ行くぞ!』


ねちっこいって‥‥
そんなことない気がするけど。


『行くぞ?忘れ物はないか?』


「はい、ありがとうございます。」


ほらね‥‥
まるで保護者と子供のようじゃないか。


助手席のドアを開けてくれると
車に乗り込み、蓮見さんの車に
ついて30分ほど車を走らせた。



『ここか?』


別荘とは違うけど、
ウッド調の素敵な家が見えて来たところに蓮見さんが車を止めたので
フロントガラスから外を眺めてみる


森の奥の小屋という名に相応しい
素敵な工房に、5人でお邪魔すると
中の壁にかけられた沢山の色の革や
糸など見たことのない道具も
沢山置いてあり、すごくオシャレな
空間だった。


『予約しました蓮見です。』


『お待ちしてました。どうぞ。』


長テーブルに腰掛けると、
可愛らしい女性が目の前に立ち
色々と説明をし始めた。


時間的に作れるのは、
キーケース、小銭入れ、名刺や定期入れ
だったので、まずは何を作るかを決め、
革の色と麻糸の色を決めることにした


1番簡単なのはリング型のキーケース
で少し難しいと折り畳める4連の
キーケースらしい。


『井崎さん決まった?』


「キーケースにしようと思うんですけど
 下手だからできるか心配で‥」


男性陣は名刺入れを作るみたいで、
既に革選びに向かってしまっていた


『大丈夫ですよ。教えますから』
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