玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
可愛いお姉さんに励まされ、
どうせならと4連のキーケースに挑戦
することにした。


『キーケースにしたのか?』


「はい。
 筒井さん達は名刺入れですよね?」


筒井さんが手にしていた
濃いスミクロのレザーに
既にかっこいいのが出来そうな予感が
伝わってくる


私もどうしようかな‥‥
時間がないからパパッと決めなきゃ。


明るめのキャメルも可愛いし、
ワインレッドも素敵だな‥‥


『井崎さん、それプレゼントしたら?』

えっ?


隣に来た亮さんに小声でそう言われると
パァっと顔がにこやかになったのか
クスクスと笑われた。


コクリと亮さんに向かって頷くと、
筒井さんに似合いそうな黒に近い濃い
ネイビーの革と、鮮やかなブルーの
麻糸を選んだ


自分のだと迷うのに、筒井さんを
イメージしたら選びやすかったから
亮さんに感謝してしまう


そこからは、もう1人助手の女性が
加わって、キーケース組の古平さんと
私、名刺入れの男性陣に分かれて
作業をし始めた。


革をカットするのだけはしてもらい、
穴を開けたり、金具をつけたり、
糸でステッチを縫ったりと
難しかったけどなんとか出来上がりに
近づいて来た。


『最後に刻印を入れたい方は、
 木槌で入れたい場所に打ち付けて
 デザインを楽しんでください。』


刻印か‥‥
日付や数字もあるし、アルファベットや
様々なハートや星などの絵もある


やっぱりここはシンプルに
アルファベットで名前を入れよう


表ではなく、鍵をつける裏側に
KOICHI TUTUI と緊張しながら
刻印を無事入れれると、
完成した作品にホッとした。


名刺入れもすごく素敵で、
使いやすそうなのが出来て
みんなで工房で写真を撮ったあと
近くのレストランでピザとパスタを
食べてから、一旦別荘に戻ることにした


キーケースいつ渡そう‥‥

星空を見ながらチョコレートは
一緒に食べたいけど、5月の時と
違って寒そうだからそんなに
長くは見れないかもしれないし。



『滉一、今日飲まないのか?』


テラスで残っていた栗を炙り、
ナッツやチーズでワインを飲んでいた
蓮見さんと亮さん、古平さんが
カウンターで私と
珈琲を飲んでいた筒井さんを呼んだ。


確かに昨日は沢山飲まれてたけど、
珍しい‥‥体調が悪くないか
心配してしまう。


『夜ドライブしたいから帰って来てから
 飲むから全部飲むなよ?』


ドライブ?

私が不思議そうに見つめると、
口パクでゆっくりと『ほし』と
言い笑った


別荘の裏から見ると思ってたのに
車で何処かに行くってことなのかな?


どちらにしろ2人で見れることに
嬉しくなり、私も筒井さんを見て
笑った。
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