玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
「荷物ってどうしてですか?
 まだ明日もあるのに‥‥」


『星がよく見える場所の近くに
 宿をとってある。
 みんなには来る前に先に帰ると
 言ってあるから心配するな。』


トクン‥‥


まさかの展開に、顔が赤くなる
私に筒井さんがまた頭をクシャリと
撫でると少しだけ笑った


最初から決まってたことを
みんな知ってたなんて‥‥
1人だけ何も知らなかったことが
既に恥ずかしい‥‥


夕食を食べ終えると、古平さんと
蓮見さんが洗い物をしてくれると
言ったので、お言葉に甘えて
荷物を纏めることにした。



筒井さんと2人で出掛けることって
なかったから、嬉しいな‥‥


星が見えるのも楽しみだったけど、
一緒に過ごせることが素直に
嬉しいと思えた。


『じゃあまたな。』

「お邪魔しました。」

『楽しんできてね。
 行ってらっしゃい!!』


3人に見送られ筒井さんの車に乗ると
暗い夜道を山の上の方に向かって
走り始め、灯一つない暗さに
少しだけ怖くなった


こんなところに泊まるところなんて
あるのかな‥‥なんて思うほど
本当に何処を見ても真っ暗だ


『フッ‥‥怖いか?』


「そうですね。都会に慣れてしまって
 いるせいか、こんなに暗いのは
 初めてでドキドキします。」


登って行ってるのはカーブを何度も
曲がるから分かるけど、筒井さんも
よくこんな山道を走れるものだ


『もう少しで着くよ。』


それから5分ほどすると、
開けた場所に一つだけ灯りが
着いていて、筒井さんが車を泊めると
助手席のドアを開けておろしてくれた。


「これって‥‥ドーム型の
 テントですか?」


ポツンと建てられた球体のような
建物の入り口のドアに番号を入力
すると鍵が空き、入り口の電気を
筒井さんが付けた。


えっ?
何これ‥‥


『すごいな。』

「‥‥はい‥‥素敵です、すごく。」


ドーム型の小さな建物の中には
小さなキッチン、テーブルとソファ、
それに大きなベッドがあり、
天井は全て透明の硝子のようなもので
一面覆われている


まるで天然のプラネタリウムだ‥‥
綺麗すぎて言葉が出てこない。


外に行かなくても星空を
眺めながら眠れるなんて
連れて来てくれた筒井さんに感謝したい


お風呂やトイレは部屋の扉から繋がった
別の建物にあり、お風呂はジャグジー
付きで広く、何もかもが素敵すぎて
感動してしまった


「筒井さん‥‥すごく嬉しいです。
 ありがとうございます。」


荷物を運んでくれた筒井さんに
お礼を伝えると、抱きしめてくれたので
私も素直に背中に手を回した


『1度来たかったんだが、一棟しか
 ないから半年前から予約して
 ようやく取れたからラッキー
 だったな‥‥晴れて助かった。』


半年!?

それってまだ私が入社したころだから
他の人と来たかったんじゃ‥‥


『男だけで来るのもあれだったから、
 お前と来れて良かった。』


蓮見さんたちと来る予定だったんだ‥
少し悪い気もしてしまうけど、
私と来れて良かったって言ってくれた
ので嬉しくなる
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