玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
過剰な接触は辞めろってさっき
人に言ったばかりの筒井さんが
私の肩に触れるのはいいの?


珈琲店での筒井さんも
大好きだったけど、
こんなふうに話す筒井さんを
知らない分、何故か
もっと知りたいとさえ思う自分がいる


『井崎さんごめんなさい。筒井さんが
 来てくれて助かったね?蓮見さんとは
 同期でもあり親友だから。』


ええっ!?


誠実そうな人の親友が女子を口説いたり
している人なの?
まさか筒井さんも
オフは蓮見さんみたいに
変貌を遂げたりするのだろうか?


さっき私に帰り際に言ってたことも、
親友ならではの
フォローなのかもしれない。


『2人は28歳にして今年から
 役職もついていて、今の会社にとっなくてはならない人達なの。
 蓮見さんはチャライけど筒井さんが
 言うように誰よりも
 仕事はやる人だから。
 それに、蓮見さんのおかげで
 緊張ほぐれたでしょ?』



確かに‥‥
さっきまでどんな人がいるのか不安だったけど蓮見さんが来てから
フロアの雰囲気が
明るくなった気がする


「みなさんいい人達で
 頑張れそうです。」


『そう言って貰えると嬉しいわ。
 それじゃあまずはデスクなんだけど
 仮部署の期間中は
 私の隣でアシスタントを行いつつも、
 週に数回受付に行って
 慣れていってもらうわね?』


「はい、よろしくお願いします。」


古平さんのデスクの横にアルミチェアを
置いて、電話の話し方や、書類作成、
他の部署に持っていくものや
備品管理などの発注の仕方などを教わる


総務の中でも労務だったり
みんなそれぞれに役割があるので、
担当の人の元に言っては挨拶をしたり、コピーの取り方、会議書類の
ホッチキスの留め方一つも
メモをしっかりとった。


『頑張ってるね、霞ちゃん。』


えっ?


古平さんに頼まれた書類6枚を10部ずつ
コピーをしていた私の元に、蓮見さんが
やってきた。


「お疲れ様です。はい、色々覚えること
 だらけですが古平さんの教え方が
 とても上手なので
 分かりやすいです。」


『ふーん‥‥‥君ってさぁ、
 筒井とはどんな関係なわけ?』


ドクン‥‥


コピー室の入り口で腕組みをしていた
蓮見さんは私の反応を見ると
少し嬉しそうに
ニヤッと笑い私のそばまでやってくる


私と筒井さんの関係なんて、
アルバイト先に来てくださっていた
お客様と店員というだけ。


なのにどうしてそんなことを
聞いてくるんだろう‥‥


珈琲店に行っていることは
プライバシーなことだから
言わない方がいいと思い少し考えた


「筒井主任は人事部の主任で、
 そのほかは私とは
 何もないはずです。」

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