玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
そして最後の1週間が終わり、
最終日の金曜日、研修時と同じように
会議室に集められた8人は
紙にゴールデンウィーク明けから
働きたい部署名を記入して面談を受けることになった。



前回よりも長く面談をするため、
人事から筒井さんのほかに
パンツスーツがとても似合う
素敵な女性が来ている



『新入社員のみなさん
 1月経ちましたので
 今から面談を行いたいと思います。
 1人30分から1時間程度を
 予定していますので、
 残りの人はここで、配られた
 プリントをしてください。
 面談は筒井とわたし、人事の
 金田が行います。』



『呼ばれた人は、順番に外の小会議室に
 移動してください。では、安藤君と
 井崎さんは移動して、第一、第二の
 どちらでもいいので面談を行ってきて
 ください。』


「『はい』」


既に筒井さんたちは一旦部屋から出て行ってしまっていたので、
部屋に入るまではその部屋に2人のうち
どちらがいるのかが分からなかった



『じゃんけんで決めようぜ。』


「えっ?う、うん。」


幼稚かもしれないけど、小さな声で
廊下でじゃんけんをすると、
勝った安藤くんは
第二を選び入って行ったので、
私も深呼吸をしてからノックをして
ドアを開けた。


「失礼します。」


『どうぞそちらにかけてください。』


ドクン


「は、はい、失礼します。」



前回と同様に長机が
2列くっついた状態で
向こう側に座る筒井さんに
お辞儀をしてから椅子に腰掛けた


『1ヶ月間お疲れ様でした。
 総務で働いてみてどうでしたか?』


濃いネイビーに
薄いグレーのストライプが
さりげなくデザインされたスーツに
水色のネクタイをしめた筒井さんが、
私の方を見て少しだけ笑った気がした。


「あの‥時間が足りませんでした‥‥」


もっと皆さんに色々
聞きたいことがあったし、
注意されずに1日も仕事が出来た日が
なかったから本音で伝えたかったのだ。


『そうか‥。では今回もまた白紙で
 提出したのはなぜだ?』


私の提出した紙を見た後、真剣な表情で
視線を向けてきた筒井さんから
晒すように下を向いてしまう


「‥‥みなさん本当に優しく厳しく、
 温かく接してくださったんです‥。
 沢山教えてくださったのに私は
 毎日失敗ばかりでした。
 みなさん本当に忙しいのに丁寧に
 フォローもしてくださり
 その優しさに甘えた1月は、成長した
 姿も見せれず終わってしまいました。
 なので、向いているか分からなくなり
 書けなかったんです。」


『分かりました‥‥。
 では、総務課の人からの評価を
 井崎さんに今から伝えます。』


ドクン
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