玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
ちゃんとメイクも直したけど、
そんなに私の顔って酷いのかな‥‥


そう言えば古平さんもさっきすぐに
泣いたことに気がついたよね。
化粧直しが足りなかったかもしれない。


ガチャっと外からドアを閉められると、
運転席に乗り込んだ筒井さんが
私の方をチラッと見た。


『シートベルトして?』


「あっ、は、はい。」


この間は私服だったけど、
スーツ姿で運転する筒井さんはまた
全然違って見える。


菖蒲とさっきまで
筒井さんのことを話してたから、
変にそのことを意識してしまって
私は窓の外を眺めたり
俯いたりとソワソワしてしまう



『連休の予定は?』


「えっ?あ、実家に帰ったり、大学の
 友達と約束してたりとか色々です。」


気を遣って喋らせてしまってる感が
凄くて、私も深呼吸してから口を開いた


「あの‥‥蓮見さんは
 今日はお車じゃないんですね?」


てっきり2人とも
車通勤だと思っていたから
古平さんと歩いて帰ってしまって
不思議に思っていた


『アイツ金曜日は飲む日だから
 電車で来てる日が多いからな。』


「そ、そうなんですね‥。筒井さんも
 よく飲まれたりするんですか?」


『俺?飲むよ?井崎さんは飲める?』


「あ‥‥実はさっきまで菖蒲と
 あれからずっと飲んでたんです。」


『‥‥‥酒を?』


そんなに沢山は飲んでないけど、
菖蒲と2、3杯は飲んでしまっていたけど何かダメだったのだろうか?


ドキッ



信号待ちをした筒井さんが、
小さく溜め息を吐いたあと
私の方に手を伸ばして頬を触ってきた


な、なに‥‥!!?
なんで今頬っぺたを触られてるの?


よくわからない状況に
1人でドキドキしていると、
スッと手が離れたあとに
おでこをコツンと小突かれた


「痛っ‥えっ?な、何するんですか?」


『アルコール‥か。飲み過ぎだ。
 泣いて顔が真っ赤なのかと
 勘違いしただろ?
 はぁ‥‥心配して損したな。』


ぶっきらぼうに
呆れた様子でそう言うと、
青信号になったため前を向いて
運転し始めてしまった


えっ?

わたし今そんなに赤い顔してるの?


元々そんなに強くはないけど、
酔ってる感じもなかったから、
顔が赤いなんて思いもしなかった。



「あ、あのすみません!
 ただの酔っ払いを送らせてしまい‥。
 もうここから歩きますから
 どこかで停めてください。」


『フッ‥‥ハハッ。』


恥ずかしさと情けなさで
両手で頬を隠し俯くと
隣から笑い声が聞こえてきたので驚いた


筒井さんが声出して笑ってる‥‥
ただそれだけなのにまた知らない顔を
見れて嬉しいなんて思ってしまう‥


『もう着くから。いい子で乗ってて。』


またいい子って‥‥


家の前に着くとハザードを出して
車を停め、私より先に降りると
当たり前のようにドアを開けてくれた。


「ありがとうございました!
 あの疲れてるのに余計な
 心配をおかけしてすみません。」


『それはもういいから今後は
 飲みすぎるなよ?‥‥それより
 今少しだけ話してもいいか?』


えっ?
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