玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
少しだけ真剣な顔をされたので、
大切な話か、お仕事の話だと思い、
背筋を少しだけ伸ばした。


改まってなんだろう‥‥
面談の後なだけに少し緊張する‥。



『3日の日、予定は何か入ってる?』


えっ?


「3日は特に入ってないですが、
 何か急なお仕事とかで
 出勤が必要とかですか?」


内ポケットからタバコを取り出すと、
吸っていいか聞かれたので頷くと
火をつけ終わり私にかからないように
白い息を吐いた。


吸ってるところを見るのはまだこれで
2回目だけど、本当に最初に珈琲店で
見ていた筒井さんと全然違う



『その日一緒に出掛けないか?』


「えっ!?
 つ、筒井さんと‥ですか!?」


あまりにビックリして、
思っていたことが
思わず口から出てしまい
慌てて両手で口を押さえる


すると伸びてきた手が
頭をクシャッと撫でて、
白い息を吐き出した後少し笑った


『フッ‥‥。残念だけど2人じゃない。
 拓巳もいるし、古平もいるよ。
 あと1人俺のツレも来る。』


「あ、そ、そうですよね‥ハハッ。」


とんだ勘違いに恥ずかしくなったので、
既に酔っ払って赤いだろう顔がもっと
赤くなってるに違いない。


『毎年、仲がいい人と集まって
 拓巳の別荘でバーベキューしたり、
 釣りしたりしながら
 ゆっくり過ごしてるから、
 拓巳が井崎さんも誘えって
 さっき連絡が来た。』


別荘って‥‥
蓮見さんってもしかしてお金持ちなの?


筒井さんもだけど
マンションを持ってるし、
今乗られてる車も相当
高いメーカーのものだ。



庶民の私はそんな人たちに
ついていけるだろうか‥


「あの、そんな仲がいい人達のところに
 私なんかが行っては楽しめないんじゃ
 ないですか?いつも行かれる
 みなさんで楽しんで行ったほうが
 楽しい気がします‥‥」


入社して1月、
確かに総務でお世話になったし、
全く知らない人達ではないけど、
急に行ったとしたら
気を使わせてしまいそう
 


筒井さんを見上げると、
吸っていた煙草を携帯灰皿で
消してから、
また真剣な顔をして私を見てきた


160センチ台と
私は小さくはない身長だけど、
見上げる高さに顔がある筒井さんは
180センチ以上はあると思う



喫茶店で注文をとるときは大抵
座った筒井さんを
少し見下ろす形だったから
見下ろされることが新鮮でじっと
見つめてしまった



『そんなことを気にするヤツは
 俺のまわりには1人もいないさ。
 無理にとは言わないが、俺も含めて
 みんな来てくれると喜ぶと思うぞ?』


えっ?
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