玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
サングラスを取られると
すごくカッコいい方で、
筒井さんと同じくらい背が高い


差し出された手にそっと手を添えると
握手をしてもらい
仲崎さんがニコっと笑った


『もう1人参加するって言ってた
 大学から付き合いがあるツレだよ。
 拓巳とも知り合いだから毎年一緒に
 行ってる。
 いいヤツだから安心していい。』


『どんな子が来るかすごい
 楽しみにしてたんだ。
 蓮見と滉一が誘ったって
 聞いたからさ。』


「あ、あの4月から同じ会社に
 入社させていただいた
 井崎 霞です。」


筒井さんが私の手から荷物を取ると、
トランクを開けてしまってくれ、
後部座席のドアを開けてくれた。


『時間ギリギリだから、あとは
 車の中で話せばいい。
 そろそろ行こうか。』


頭を軽く撫でられると一気に緊張が
増してしまったけど、車に乗り込んで
出発することになった


仲崎さんは筒井さんと同じ大学で、
スポーツクライミングやキャンプの
サークルで知り合ったそうで、
その後蓮見さんとも仲良くなったみたい


後ろから聞いてる2人の会話が楽しくて
知らない筒井さんを
また見ることができて
嬉しくなってしまう


高速に乗る前に立ち寄ったス◯バの
ドライブスルーでお2人は
ブラックのホットコーヒー、
私はホットのソイラテを頼んだ。


「筒井さんあの‥お金払います。」


『井崎さんいいんだよ、こういう時は
 年上に甘えておけば。』


『は?じゃあ亮は払えよな、年上だろ?
 はい、井崎さん熱いから気をつけて』


「あ、ありがとうございます。
 いただきます。」


『俺は休日返上で呼ばれたから
 滉一の奢りに決まってるだろ?』


『なんだよ、それ。』


本当に仲がいいんだなって思えるくらい
筒井さんがリラックスされていて、
車内に香る珈琲の匂いに
マスターの珈琲店を
思い出しながら受け取った
甘いソイラテを飲んだ


トイレ休憩もしながら
2時間ほど高速を走ると、
あっという間に景色が変わって行き、
山の緑の色も深くて道路沿いに生い茂る
木々もとても綺麗に見えた


都内も緑がないわけではないけど、
山に囲まれてはないから、初めてで
窓にへばりつくように外を眺めて
キョロキョロしてさしまう


こんなところに別荘なんて素敵だな‥‥
改めて蓮見さんってほんとに
何ものなんだろう‥‥


『子供みたいだな‥‥口開けて』


えっ?


バックミラー越しに目が一瞬合うと、
小さく笑われてしまい、
自分がどんな顔で外を見ていたのか
分からなくて恥ずかしくなる


だってこんな景色見たことなかったし、
はしゃいでないって言ったら
嘘になるけど、
大人の筒井さん達からしたら
子供に見えてしまうんだろうな‥
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