玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
『お待たせしましたー』


着替えてから一階に行くと
男性たちは既に着替え終えて
リビングでくつろいでいて、
古平さんは階段を降り切ると
くるりとそこでターンした


『遅かったな。‥なんだよそれは。』


『えっ!!?本気で言ってます?
 今年の為にウェア新調したのに!?』


蓮見さんと言い合っている古平さんを
他所に筒井さん達の方へ行こうとすると
腕を引っ張られて後ろに倒れそうになる


『じゃあ井崎さんはどうですか?』


「えっ?ちょっと私は別に」


『おっ可愛い!!しかも格好完璧。』


えっ?完璧?


大学のサークルで何度も使った
トレーニング用のフィットネスパンツに
ハーフパンツを重ねて上はシンプルな
半袖に脱ぎ着出来るようにお揃いの
上着を着てるだけだからオシャレでもないんだけど完璧なのかな‥‥


『もしかして俺の気持ちが
 伝わってたから
 着てきてくれたとか?』


「えっ!?あの‥普通に運動しやすい
 服って‥‥ウワッ!!」


これで何度目になるか分からない
蓮見さんからの熱烈なハグに
慌ててしまうと、あっという間に
亮さんが剥がしてくれた。


『はぁ‥拓巳本当に相変わらずだな‥。
 井崎さん大丈夫?』


「は、はい、ありがとうございます。」


『チェッ、なんだよ!滉一にも
 注意しろよな?アイツが1番
 多分ちょっかい出してるから。』


ドキッ


ちょっかいって‥‥
あれはくだらないことで悩んだ私を
正してくれただけだし‥‥


『もう行こう。アイツはほっとくのに
 限るから。さ、行くぞ。』


『あっ!滉一逃げるなよ!』


『は?逃げてないし、俺のはちょっかい
 じゃなくてれっきとした治療だから』


えっ?
‥‥ち、治療?


隣にいた筒井さんを見上げると
何事もなかったかのように笑い
亮さんと先に出て行ってしまう。



治療だったんだ‥‥‥
だとしたらキスなんて
すごい大人の治療に感じる‥‥


絆創膏貼っといたからみたいな
テンションで顔色すら変えずだったし
意味がないんだなって改めて思った



あんなの筒井さんにとったら
泣く子を黙らせただけの行動なんだから


『はぁ‥先が思いやられるね。
 井崎さんお水持ってってね。』
 

「はい、ありがとうございます。」


いったい何処へ行くのか
分からずに外へ出ると、
さっきまではなかった物に驚いて
古平さんの方を見てしまった


『ね?気持ちよさそうでしょ?』


いつの間に用意されていたのか、
ずらーっと5台並べられた自転車の前で
筒井さんたちはストレッチを始めていた

 
さっきはちゃんと見てなかったけど、
3人ともタイトなフィットネスパンツに
ショートパンツを合わせて上は
既にTシャツ1枚になり、体の鍛えられた筋肉がそれぞれ際立っている


スーツ姿だと分かりにくかったけど、
体のラインが出る服装だと意外に
ガッチリされてて目のやり場に困る
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