玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
1番見られたくなかった人に
1番最初に見られるなんて‥‥


「すみません、失敗ばかりで。
 あのもう大丈夫ですからお仕事に
 行かれてください。」


掴まれたままの手首を離して
欲しいのに、それどころか少しだけ
強く握られてしまう


『お前‥‥震えてる‥』

えっ?


自分でも震えてるなんて
気付かなかったけど、
筒井さんが掴んでた先の手が
震えていて思わず上を見上げた。


「ほんとに大丈夫です。
 カーディガンありますし。
 古平さんが待ってますので
 失礼します!」


腕を振り解くと、一気に階段を
駆け降りて7階まで行くと、
非常扉を出た時に息切れが酷く
総務課へ戻る前になんとか
呼吸と表情を整えた。


良かった‥
まだ古平さん戻ってきてなかったんだ


椅子にかけたままのカーディガンを
羽織ると、少し暑かったけど
1番上までボタンを締めていく


‥‥これならなんとか隠せそうだ


それから午後も、
入力のお手伝いをしたり会議資料や
お水を人数分会議室に並べたり
備品の整理に向かったりと、
あっという間に1日が終わった。


『井崎さんお疲れ様。
 B会議室の片付けだけ終わったら
 上がっていいよ。』


「分かりました。入力出来ましたので
 確認だけお願いします。」


任されていた資料の集計の入力を
確認してもらい、会議室に向かった。


はぁ‥‥やっと帰れる。
明日が土曜日だと気持ちも少しは
軽く感じられる。


金曜日はノー残業DAYのため
17時を迎えるとみんな嬉しそうに
帰っていくので頭を下げながら
挨拶をして見送っていく


コンコン

「失礼します。」


誰もいないとは思うけど、一応念のため
ノックをして入り、テーブルの上の
ゴミや忘れ物や落とし物がないかを
チェックしてからテーブルと椅子を
綺麗に整えた。


インクのシミなんてもう取れないよね‥

結構着やすくてお気に入りだったため
残念だけど仕方ない。
一応シミ抜きか漂白してみようかな。


八木さんに会うことも受付になれば
そんなにないはずだからあと1週間
何事もなく過ごせるといいな‥‥


「お疲れ様です。お先に失礼します。」


『霞ちゃんお疲れ。今日も助かった。
 受付行かずにこのまま上でいて欲しい
 くらいだけど嫌?』


嫌?って言われても‥‥
それは私が決めることじゃないし‥


正直一階で受付をするのも
やりがいがあるし前よりは楽しいん
だけど、ここで色んな仕事をして
先輩のサポートをしてると周りが
よく見えるから忙しいけど自分には
向いている気もしてる


「楽しいですよ?皆さん優しいですし、
 厳しい時もちゃんとフォローして
 くださるので。」


『よし!飯行こう!!」


えっ!?
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