玉響の花雫       あなたにもう一度恋を 壱
『蓮見さんにも言わないの?』

「うん、本当に大丈夫だから。」


菖蒲と駅で別れると、
明日からのことを考えてしまった。


私服なら隠せるからいいんだけど、
受付の制服は肘までしか袖がないから
絶対的に見えてしまう。


位置が手首とかならサポーターとかで
隠せたのに、中途半端に肘の手前辺りから付けられてしまったから困ったな‥


ズキズキと痛む腕をさすりながら
思わず溜め息が出てしまう


家には絆創膏すらないから、
ドラッグストアに寄り、消毒や
変えのガーゼ、包帯などを買った。


さっきは菖蒲がやってくれたけど、
自分で上手に巻けるかな‥‥
いっそ取らずに明日医務室に行って
やってもらった方が
いいのかもしれない。


その日はなんだか食欲もわかずに
ビニール袋で濡れないようにカバー
してなんとかシャワーも浴びて
早めにベッドに入った。



「佐藤さんおはようございます。」


朝一番に医務室を覗いたけど、
保険医さんはまだみえてなくて
仕方なく昨日のままの状態で
制服に着替えた。


『おはよう‥‥ってどうしたのそれ?』


「すいません、
 やっぱり目立ちますよね。
 大したことはないんですけど、
 怪我してしまって‥‥でも
 業務は全然差し支えずこなせるので
 安心してください。」


いつも通り植物の埃がないか確認
しながら水やりを終えて社名の
パネルや受付を綺麗に拭いていく


正直朝起きた時から痛みは増して
ズキズキはしてるんだけど、
今日頑張れば明日は休みだから、
終わったら病院行けたら行こう‥


受付は7時半の出勤なので、
掃除中は他の社員さんが多く
エントランスを通って
エレベーターホールに向かうので、
挨拶をしながら準備をしていた


『霞ちゃんおはよ!!』


「あ、蓮見さんと古平さんも!
 おはようございます。」


『あれ?どうしたのその腕‥‥
 昨日はなかったわよね?』


ギクッ

古平さんって前にも泣いてた時に
すぐに気がついたし、わたしのことを
よく見てるからやっぱりすぐに
気付かれてしまった。


「た、大したことないないんです!
 ちょっと怪我してしまっただけで
 元気なので大丈夫です!」


わたしが笑顔でそう伝えると、
古平さんと蓮見さんが顔を見合わせて
何かを小声で話し始めた


『霞ちゃん、今日は上で働こう。』


「えっ?でもそしたら佐藤さんが
 1人になってしまいます。
 休憩だって行けなく‥」


『うん、分かった。大丈夫。
 秘書課に応援頼むから今日は
 とりあえず上来て?
 佐藤ちゃん後で
 応援呼ぶから待っててね。』


『井崎さん血が滲んでるから
 手当てしにいこう?』


えっ?
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