クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 ドキドキしながら口を開くと、祐駕くんの手がこちらに近づき、口の中にライベクーヘンが入ってくる。
 前歯でかじると、サクッと音がして口の中でほろほろとほぐれた。

「これ、じゃがいもだ! ハッシュドポテトに似てる」
「正解」

 祐駕くんは顔を上げ答えた私に、頬を綻ばせる。

「このクリームは何? 甘酸っぱくて、これにぴったりなんだけど、初めて食べた味。フルーツっぽいけれど――」
「それは、りんご」
「りんご!」

 驚きすぎて、言葉を覚えたての子供みたいになってしまった。そんな私の反応に、祐駕くんはケラケラと笑う。

 なんだかいいな、こういうの。

 胸に描いていた〝幸せな家族〟。
 それに少し、近づけているような気がした。
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