クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 何があって、そうなったのかは分からない。

 けれど、祐駕くんは観光客を守っただけでなく、少女に〝幸運のチャーム〟を渡していた。
 その行為は、きっと彼の優しさなのだと思う。まるで、サンタクロースみたいだ。

 祐駕くんの優しさが、彼女を変えるきっかけになればいいなぁ。
 そんなことを思いながら、口を開いた。

「祐駕くん、ありがとう」
「礼を言われることは何もしていない」
「ううん、私の気持ち汲んでくれた」

 それだけで、胸がじんわり温かい。

「そろそろホテル戻るぞ。映茉、危なっかしいからな」
「うん」

 祐駕くんはちょっとだけ先を歩く。けれど、手は繋がれたまま。

 クリスマスマーケットを後にするのは寂しいけれど、心は温かい。私はホテルに戻る道中、祐駕くんに繋がれた手をぎゅっと強く握り返していた。
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