クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「俺はドイツの鉄道は好きじゃないんだ。前も言ったろ、ドイツの鉄道は二本に一本は遅れる。だったら自分で運転するほうが全然いい」

 ステアリングを握りながら、当然のことのように紡ぎ出す祐駕くんに、私は何も言えない。

「朝食、テイクアウトで悪いな。本当は、ミュンヘンの空気を感じながらゆっくり摂るのもいいかと思ってはいた」

 それどころか、申し訳なさそうに眉をひそめる。余計に申し訳なさが募った。

「もしかして、昨日も車移動したの? どのくらいかかった?」
「6時間くらい。あ、映茉は寝てていいからな」
「そうじゃなくて……」

 祐駕くんの身体が心配だ。祐駕くんの方が、圧倒的に疲れてるはずだ。

 なんて言おうか迷い、しゅんと肩を落とす。祐駕くんはクスリと笑った。

「俺なら平気だ。映茉が隣にいてくれれば、それだけで元気になる」

 胸がキュンとなるけれど、私が言いたいのはそういうことじゃない!

「それは元気って言わないよ」

 言ったけれど、「心配無用だ」と笑顔で押し切られてしまった。
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