クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 ふっと意識が覚醒する。どうやら寝てしまったらしい。

 もう、どうして!?
 祐駕くんに申し訳ないから、起きてようって思ってたのに!

 自分へ憤り、祐駕くんに申し訳なさすぎて、彼の顔を見られない。
 運転席とは反対側の窓の外に目を向けると、観光ガイドブックに載っていたのと同じ、宙に浮かぶ銀色の丸底フラスコみたいな塔見えた。

「わあ、ベルリンだぁ!」

 すると、背後から「おはよう」と声を掛けられた。

「テレビ塔は知ってるんだな」
「知ってるっていうか、ガイドブックで見た!」
「そうか。朝はあまりドイツらしくなかったから、昼はドイツらしくいこうか」

 祐駕くんはそう言うと、市街地の中を走り、道路の脇に車を停めた。

 ドイツでは路上駐車をするのが一般的のようで、道路脇にたくさんの車が停まっている。
 ミュンヘンでもよく見た光景だが、ベルリンは駐車している車がより多く、なかなかスペースが空いていない。
 けれど、祐駕くんは見つけた小さなスペースに見事に縦列駐車を決めた。

 近くにあった券売機で料金を払った祐駕くんは、「降りて」と助手席側の扉を開く。

 運転もうまいし、スマートでかっこいいし、ズルいなぁ。

 差し出された手に、私の心はまた高鳴ってしまった。
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