クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 昼はドイツらしく、と言った祐駕くんに連れられてやってきたのは、目の前にブランデンブルク門の見えるカフェだった。

 昨夜のホテルも、ミュンヘン新市庁舎の目の前という最高のロケーションだったのに、このカフェもロケーションが最高だ。

「昼食と言っておいてなんだが、ここはザッハトルテとバウムクーヘンが美味い」

 祐駕くんは言いながら、メニューに顔を向けた。私はドイツ語が読めないので、注文は祐駕くん任せだ。

「ケーキ好きだから、それでいいよ」
「本当か?」

 祐駕くんはキョトンとする。その顔が予想外に可愛くて、思わずクスっと笑ってしまった。
 すると、祐駕くんは顔をほんのり赤らめる。

「甘いもの、好きなんだ。ここのバウムクーヘンはチョコレートがかかっていて、それがまた美味い」
「じゃあ、同じだね。私も、チョコレート好き」

 クスリと笑みをこぼせば、祐駕くんはさっと手を挙げて早口にウェイターに注文をする。淡々と話すその顔は、もしかしたら照れ隠しなのかもしれない、と感じた。
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