クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
カフェを出て、祐駕くんとベルリンの街を歩いた。すると目の前に、グリッド状に無数に並ぶ、大きな直方体のコンクリートの固まりたちが現れた。
ここは、戦時中に命を奪われたユダヤ人たちを追悼するために作られた、記念碑なのだそう。
巨大なコンクリート塊の上に積もった昨夜の雪が、晴天の下で少しずつ溶け出している。それは、冬のベルリンの冷たい空気を浴びて、まるで涙を流しているよう。
思わず手で触れたら、とても冷たかった。けれど、祐駕くんも私の手の隣に自分の手を置いた。
「傷付かなくていいはずの誰かが傷付いて、死ななくていいはずの誰かが死ぬのを許容して、この世界は回っている。俺は、そんなのおかしいと思う」
「え?」
見上げると、祐駕くんは記念碑に置いた自分の指の先を、じっと見つめていた。
ここは、戦時中に命を奪われたユダヤ人たちを追悼するために作られた、記念碑なのだそう。
巨大なコンクリート塊の上に積もった昨夜の雪が、晴天の下で少しずつ溶け出している。それは、冬のベルリンの冷たい空気を浴びて、まるで涙を流しているよう。
思わず手で触れたら、とても冷たかった。けれど、祐駕くんも私の手の隣に自分の手を置いた。
「傷付かなくていいはずの誰かが傷付いて、死ななくていいはずの誰かが死ぬのを許容して、この世界は回っている。俺は、そんなのおかしいと思う」
「え?」
見上げると、祐駕くんは記念碑に置いた自分の指の先を、じっと見つめていた。