クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
【3 近くて遠い、それぞれの想い】

今夜の魔法はとけないで

 祐駕くんの住むマンションは、ブランデンブルク門から少し離れた、シュプレー川のほとりに位置していた。

 この辺りは、歴史的な街並みとは打って変わって近代的なビルも多い。まさに、ベルリンの〝中央区〟といった感じだ。

 さっそく彼の部屋に上げてもらい、今夜のレセプションの準備をする。私はカバンからドレスを取り出し、パンプスは揃えて玄関へ置いた。

「日程は短いのに鞄を大きくさせたの、このせいだったんだな」

 祐駕くんは言いながら、私の鞄を覗いてきた。

「お土産たくさん買って詰めるためでもあるんだけどね」
「なるほど?」

 祐駕くんは言いながら、昨夜はグリューワインの入っていたカップを洗い、そっと鞄に入れてくれた。

 それから私は、洗面所を借りてドレスに着替えた。あとは化粧を直して、髪の毛もアップにしよう。
 そう、思ったのだけれど。
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