クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 午後七時半。一度家に帰った私は、ワンピースに着替えて家を出た。持月くんに指定されたレストランが、高級ホテルの最上階にあるレストランだったのだ。

 メッセージのやり取りで知ったのだが、持月くんは日本の外交官として、今はドイツに住んでいるらしい。研修で日本にいる間、宿泊しているのがそのホテルなのだそう。

 お礼の意味も込めて、食事代くらい奢ろう、などと考えていたのだが、まさか一食二万円もするお店になるだなんて。いやいや、お礼だからお代は私が出そう。

 そんなことを考えながら、慣れないヒールで道を歩く。出勤時はスニーカー、勤務時も安全靴の私はこんなに女性らしい靴も服も久しぶりだ。そんな私の手には、不釣り合いなほど大きな紙袋。持月くんに手渡す、感謝状が入っているのだ。

 持月くん、格好良かったなぁ。

 私はホテルへ向かいながら、持月くんの救護の様子を思い出す。

 頭の回転が早いのか、先を見据えた行動力があった。だからだろう、動きに一切無駄がなかった。あんな状況だったにも関わらず、私よりも冷静沈着で判断力もあった。

 高校の時の彼にも、〝クールな秀才〟というイメージがある。
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