クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 そのまま備え付けのサロンらしき場所に連れられ、ヘアメイクをしてもらった。

 アップにした髪、煌びやかなシャンパンのようなアイシャドウ。キラキラと宝石がちりばめられたような、けれど上品なメイクはさすがヨーロッパだ。

 まるで、魔法をかけられたよう。
 今夜の私は、大人なセレブだ。

 どこかへ行っていた祐駕くんは、私のヘアメイクが終わった頃、ちょうどサロンへ戻ってきたらしい。鏡の向こうに、彼が見えた。

 どうしよう、かっこいい……。

 鏡越しなのに、見惚れてしまった。
 祐駕くんは、ミッドナイトブルーのタキシードに着替えていたのだ。

 黒色のベストと小ぶりなブラックタイが良く似合う。胸元のポケットから覗くハンカチーフは、私のショールと同じワインレッドだ。

「素敵だ」

 祐駕くんは鏡越しに、ニコリと笑いかけてくる。その笑みに、私の胸がドクリと反応してしまった。

 素敵なのは、祐駕くんの方だよ……。

「行こうか」

 ヘアメイクをしてくれた店員が私の座る椅子をくるりと回す。私は祐駕くんに差し出された腕に手を絡め、高鳴る鼓動のまま、お店を後にした。
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