クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「映茉、悪かった」

 突然祐駕くんに謝られ、「ん?」と振り向く。

「どうやら俺は、映茉を不満にさせてしまったらしい」
「え!?」

 思わず大きな声を出してしまう。すると、フリートベルクさんはケラケラと豪快に笑い出した。
 気持ちが祐駕くんの方を向いていると、フリートベルクさんにはバレてしまっていたらしい。

 恥ずかしい……。

 羞恥で思わずうつむくと、何か別の視線を感じた。そっと目線を上げる。すると、先程祐駕くんと話していた女性が、私の方をじっと見ていた。

 まるで品定めするような彼女の視線は、少し居心地が悪い。目が合うと、ふんっと含み笑いで鼻を鳴らされた。

「映茉、こちらはエミリア。フリートベルク氏の娘さんだよ」
「はじめまして、エマさん」

 ニコリと流暢な日本語で話しかけられ、私の胸はドクリと嫌な音を立てた。
 慌てて笑顔をうかべたけれど、その間にも、エミリアさんは祐駕くんの耳元に向かって何かを囁き、祐駕くんは難しい顔をする。

 何を話しているんだろう。聞きたいけれど、聞けない。
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