クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 顔貌の整った祐駕くんと可愛らしいエミリアさんは、お似合いだと思う。祐駕くんも、エミリアさんと話すときはにこやかで楽しそうだった。
 もしかして、二人は――……

 嫌な予感が胸をよぎるけれど、祐駕くんに限ってそんなことはないだろう、と心が言う。彼は、誠実な人だ。

 祐駕くんのあの笑顔は、きっと外交上のもの。心からの笑顔じゃないだろう。

 そう考えで、ふと思い出した。

 私との、結婚も――

《咲多の思う幸せな家庭を築けるように、努力する》

 ――彼の、努力という名の演技だ。

 考え出したら、トゲトゲが不安に変わっていく。

 お互いに独り身だから、いい歳だから。信頼できるから。英語ができるから。私と祐駕くんは、そんな理由で結婚したにすぎない。

 何となく、愛が芽生えているような気がしていた。
 愛されていると思っていた。幸せを感じていた。

 けれど、やっぱりあの愛も幸せも全部、祐駕くんの〝努力(演技)〟なのかもしれない。
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