クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜

ひとりぼっちの年末年始

〝ドイツ土産です、ご自由にどうぞ 持月(咲多)〟

 勤務前、宿舎の入り口にそう書いた紙と共に、お土産に買ったグミやらキャラメルやらの小袋を大量に入れた箱を置いた。
 早速何人かの同僚や、乗務員が「ありがとう」と手に取ってゆく。

「いえいえ、よかったらご家族の分もどうぞ!」
「さすが新婚さん。家族の分もなんて、気が利くね」

 笑顔を向け、新婚感の幸せオーラを無理やり纏って駅舎へ向かう。どうやら皆、私が新婚旅行でドイツへ行っていたと思っているらしい。

 今日は、ドイツから帰ってきて、初めての出勤だ。
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