クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 時差もあるけれどたまには電話しようとか、帰国予定日が決まったら連絡するとか、そんな話をたくさんした。

 別れ際は、やっぱり辛くなってしまった。そんな私の頬に、祐駕くんは空港のど真ん中で、人目もはばからず優しいキスを落としてくれた。

 大丈夫。祐駕くんの妻は、私なんだから。
 約半日のフライトの間、私はひたすら左手の薬指と、胸元のネックレスを握って、その愛の所在を確かめていた。

 けれど、それはプライベートの話だ。
 年末年始は、鉄道事故の最大警戒期である。
 安全な鉄道の運行のために、頑張らないと。

「ホーム業務、行ってきます!」

 私は気持ちを切り替えて、駅員室を出る。冬の寒さに包まれたホームは、私の心を引き締めてくれるようだった。
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