クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際０日な私たちの幸せ演技婚〜

　年明け、一月半ば。私はもうすぐ竣工するマンションの見学会に来ていた。
　もちろん、祐駕くんはドイツにいるから私一人だ。

　参加者はご夫婦だったり、家族連れがいる。
　これからご近所さんになる彼らの中、一人きりの私はなんだか浮いている気がして、ため息がこぼれた。

　四階建ての低層マンションは、高級感漂うエントランス。コンシェルジュ付きで、警備も最新だ。
　防音もしっかりしているから、子供が騒いでも大丈夫だと説明があった。

　祐駕くんとの未来を思い描き、ここに家族で住むのだと実感がわく。
　けれど、祐駕くんに見せようと内覧の様子を写真に収めて、祐駕くんがドイツにいると思ったら、頭の中にエミリアさんが出てきた。

『祐駕は日本には戻らないの。私が好きになってしまったんですって。残念ね』