クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜

同期の出世と夫の帰国

 ぽつぽつと引っ越しを始め、完了した二月頭。ちらちらと雪の降り始めた朝明台駅の駅員室で、私は今日も業務に勤しんでいた。

 祐駕くんは予定よりも早く、今日帰国することになった。
 それに合わせて、私も引っ越しを終わらせた。前の部屋は、ちょうど二月末が更新月なので、そのまま更新せずに引き払う予定だ。

 もう少しで、祐駕くんに会える。私が祐駕くんを独占できる。
 そうしたら、きっとこの胸の不安も消えるはず。

 今日からまた、頑張ろう。
 〝幸せな家族〟に、なれるように。

 そう思いながら、あと少しで終わる業務時間を前に、開いたパソコンの画面。飛び込んできた名前に、思わず声を上げた。

「え! 旭飛!?」

 社内報に書かれていたのは、春に試運転から本運転に切り替わる、新型特急車両の運転に抜擢された運転士の名前。
 社内でたった六名の精鋭の中に、旭飛の名前があったのだ。
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