クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 祐駕くんは、エミリアさんとは何もないと言っていた。
 だからそうだと信じて、待っていたのに。

 夕闇に溶けていくような時間、電車の中。揺れに合わせて、勝手に身体がガタガタと揺れる。
 脳裏に浮かぶのは、先程見た光景だ。

 祐駕くんの隣に、エミリアさんがいた。

 二人で国際線から降りてくる姿はとても親密そうだった。楽しそうに話す二人に気付かれる前に、慌てて駆け出してしまった。

 私、迎えに行くって言ったのに。
 空港で待ってるって、連絡したのに。
 なんで二人でいるの? なんでエミリアさんが一緒なの? なんでそんなに、仲良さそうなの?

 レセプションで見た、彼女の勝ち誇ったような態度を思い出してしまう。
 エミリアさんが、脳裏で私を嘲笑った。

『残念だったわね、祐駕は私のことが好きになってしまったの。彼の心は、私のものよ』
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