クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 祐駕くんに限って、そんなことあり得ない。

 そう思いたいけれど、私と祐駕くんの間にあるのは、法律上の関係だけだという事実が胸を襲った。

 最初からここに、愛は無かった。
 あったのは、祐駕くんの〝努力〟という名の〝演技〟だけだ。

 祐駕くんがどんなに〝努力(演技)〟してくれるとしても、私たちは永遠に愛のない夫婦。
 どんなに楽しくとも、どんなにドキドキさせられようとも、私たちの間に愛はない。

 ドイツで過ごしたあの時間も、幸せを感じたあの夜も、全部彼の〝努力(演技)〟――……。

 うつむけば、涙が溢れそうになる。けれど、電車内で泣くなんて、できない。
 必死に涙を堪え、朝明台駅まで戻ってきた。
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