クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「なんだよ、それ」
「本当、バカだよね、私」

 言葉にすれば、幾分落ち着く。思考が整理されて、自分の信じていた幸せな未来の虚しさに気づかされる。

 愛されたいと思ってしまった。
 愛がないことは、分かっていたのに。

「映茉」

 名を呼ばれ、自嘲の笑みとともに顔を上げた。

 私のこと、馬鹿にしていいよ。いつもみたいに、軽く罵っていいよ。
 そう、思ったのに。

 ――え? 旭飛?

 彼の腕が、私をふわりと包んでいた。

「今からでも、俺にしろよ」

 腕の中で告げられた言葉に、私は目を見開いた。
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