クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際０日な私たちの幸せ演技婚〜

「――エミリアはただ、日本旅行に来ただけだ。聖地巡礼をするのだと言っていた」
「セイチ、ジュンレイ……？」

　首を傾げる私に、祐駕くんは説明してくれた。
　エミリアさんはどうやら、日本のアニメオタクらしい。日本へ来たのはそのアニメで描かれた土地を巡る旅行のためだそう。

「じゃあ、何で空港で一緒にいたの？」
「年頃の娘の一人旅を心配したフリートベルク氏が、せめてもと俺の帰国に合わせて同じ便を取ったんだ。エミリア本人は、子供扱いしないでとご立腹だったがな」

　なんだ、そうだったんだ。
　ほ、と安堵の息をつく。その息が白く濁って消えた先で、祐駕くんは怪訝な顔をしていた。

「もしかして、俺とエミリアの仲を疑っていたのか？」
「疑ってたっていうか、祐駕くんが私のこと好きじゃないと思ってたから、エミリアさんになびいちゃう可能性もあるかな、とか思って」

　言えば、祐駕くんがきゅっと繋いだ手に力を込めた。

「レセプションの時にも言っただろう。俺とエミリアは、そういう関係じゃないと」
「でも、仲良さそうだったよね。レセプションの時も、さっき空港でも」

　思ったよりトゲのある言い方になってしまった。