クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 すると祐駕くんはため息を零した。

「俺の声が彼女の推しの声に似ているらしく、喋るたびに騒がれるだけだ」

 は?
 思わず、漫画のようにぽかーんという効果音付きで口が開いた。

 祐駕くんはもう一度深いため息をつきながら、「俺は全く似てるとは思わないんだがな」と呟く。

「とにかく、エミリアとの仲は疑われるようなものじゃない。アイツが勝手にキャーキャー言ってるだけだ」
「でも、エミリアさんが祐駕くんのこと好きだって可能性は――」
「ない。アイツはただ日本アニメへの愛が深いだけだ」

 嘘でしょ……。
 身体の力がどっと抜ける。すると、祐駕くんがふらついた私から手を離し、その手でさっと腰を支えてくれた。

「他に不安なことはないか?」

 祐駕くんはそのまま、私の腰を抱き寄せて歩いてくれた。

「不安なら、不安だと言って欲しい」
「ううん、平気」

 言えば、祐駕くんは「では」と、改めて優しく微笑む。

「俺は映茉が好きだし、映茉を愛している」
「祐駕くん……」

 その優しい視線が、たまらなく愛しい。
 私は駅から自宅までの短い道のりを、祐駕くんに寄り添って歩いた。
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