クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 ん? 今、何て言った?

 キョトン、としていると、持月くんはこちらをじっと見てくる。
 ウェイターが去っていくと、持月くんは口を開いた。

「咲多、未婚だろ?」
「あ、うん、そうだけど」

 それを聞いてくるってことは、聞き間違いじゃないよね?

「ちょっと待って、『結婚』って言った?」
「ああ」

 確認も虚しく、やはり持月くんは『結婚しないか』と言ったらしい。
 動揺しまくる私の前で、持月くんは運ばれてきた食事を淡々と口に運ぶ。一体何を考えているのだろう。

「つまり、これって……プロポーズ?」
「言われてみればそうだな。そういうことになる」

 持月くんはこちらに顔を上げ、今気づきましたと言わんばかりに納得している。

「待って、え? 何で唐突にプロポーズ?」

 思わず聞いてしまった。もしかして、持月くんって、私のこと好きだったり――?

「結婚したいからだ」
「それは分かったけれども!」

 聞きたいのは、そういうことじゃない!

「あ、あのさ……」

 伝わらないなら、聞くまでだ!
 意を決し、火照る頬を隠さずに持月くんをじっと見た。持月くんは「ん?」と、顔を上げる。

 目が合い、心臓がおかしいほど大きく鳴る。
 それでも、聞け! 聞くんだ、私!

「持月くんって、私のこと、好き、だったり……する?」
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