クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「祐駕の決めたことなら口を出すなって、あの人にも言われたわ。でもね、祐駕の母親としては、どうしても口を出したくなってしまって。祐駕、一人で何でもしてしまうところがあるでしょ。器用だからこそ、どこかで潰れてしまわないか、心配なのよ」

 確かに、祐駕くんは一人で何でもしてしまう。ドイツの観光の時だって、この家を決めた時だって、全部、彼一人に負担をかけてしまった自覚はある。

 だから、お義母さんの気持ちは分からなくもなかった。きっと、子を心配する親心なのだろう。

「映茉さんの仕事を責めるつもりはないの。私だって、できればCAの仕事を続けたかった。けれど、もし中途半端な気持ちで祐駕と一緒になったのなら、申し訳ないけれど、私はやっぱりこの結婚に納得できないわ」

 そんな……。
 思うけれど、口には出せない。黙っていると、お義母さんは再び口を開いた。

「それに、年末年始もあなた、日本にいたんでしょう? 外交官は、特にヨーロッパでは年末年始は特にレセプションが多いのよ。結婚したのにパートナーのいないレセプションなんて、祐駕がどんな目で見られたか……」

 紡ぎながら、お義母さんはため息を零す。
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