クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「仕事も祐駕(外交官の妻)もどっちもなんて、私はやっぱり無理だと思うのよ。映茉さん、酷なこと言うようだけれど、祐駕と離婚する気はない?」
「離婚は、したくないです」

 あの日、想いを通わせたからなお、離婚などしたくない。今、私の未来は、祐駕くんと共にある。

「じゃあ、お仕事を辞める気はない?」
「それは……」

『辞めます』

 そうすぐに言えれば良かったのだけれど、言えなかった。

 私は、夢に破れた駅員だ。けれど、やっぱりこの仕事は好きだ。それに、祐駕くんが「すごい」と言ってくれた、ドイツで環境大臣にも褒められた、私の誇りなのだ。
 言い淀んでいると、お義母さんはそんな私を見て溜め息を漏らした。

「祐駕の相手は、あなた以外にもいるの。祐駕を好きならあなたはどうすべきか。外交官の妻としての役割を、もう一度ちゃんと考えて欲しいと、私は思っているわ」

 お義母さんはそう言うと、部屋から去って行った。
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