クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「うん。仕事を辞めるか離婚するか、考えなさいって」
「お袋……」

 祐駕くんの呟きには怒りが籠っている。

「あと、ヨーロッパの年末年始は、レセプションも多いって聞いたの。一緒にいられなくて、本当にごめん」
「そんなの、映茉には関係ないだろ」
「関係なくないよ!」

 思わず大声を出してしまった。

「祐駕くんの未来は、私の未来でもあると思うの。なのに、関係ないとか……言わないでよ」
「でも、この結婚で俺は映茉に負担をかけたくないんだ」
「負担って何? じゃあ、なんのために結婚したの私たち」

 言ってから、ハッとした。祐駕くんの顔が、徐々に悲しみに歪んでゆく。

「悪い」

 祐駕くんはそう言うと、先に風呂に入ると部屋を出ていく。私はそんな祐駕くんに合わせる顔がなくて、早々に布団に潜った。
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