クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜

私が本当にしたいこと

「離婚、するかも」

 翌日の仕事終わり、駅舎から宿舎に向かう途中でぽつりとこぼすと、同じく仕事終わりで隣を歩いていた旭飛が怪訝な顔をした。

「何言ってんだよ? あれだけ人前で愛してるだとか好きだとかイチャイチャしてた人たちが。喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩っていうか……覚悟が足りてなかったなって、気付かされることがあって」
「覚悟?」
「うん。祐駕くんの――外交官の妻になる、覚悟。やっぱり、外交官の妻って旦那さんを支える、大変なポジションなんだって気づいたの。私には、そんな覚悟ないなって」

 続ける私の言葉に、旭飛の眉間の皺が多くなる。

「それに、祐駕くんには私なんかより、〝外交官の妻〟として、もっといい相手がいるんだろうなって思った。だから、私なんかと結婚してるより、離婚して、もっといい相手と出会って――」
「そんなの、違うだろ」

 旭飛は立ち止まり、私の顔を怒りを孕んだ真剣な目で見つめた。
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