クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「映茉はそうやって、また自分を犠牲にすんのか?」

 旭飛の言葉に、身体がピクリと震えた。

「何だよ、外交官の妻としての役割って。好きって気持ちは、嘘じゃねーんだろ? なのに離婚するって、おかしいだろ」
「おかしくなんてないよ、私は別に――」
「苦しいくせに、悔しいくせに。映茉はそうやって、いつも自分を犠牲にしてんだよ。試験に遅れて車掌になれなかったのだって、それが理由だろ。少しくらい、自分を優先しろよ。自分の幸せを、夢を、優先しろよ」

 旭飛の声は、ヒートアップしていく。そして。

「お前が本当にしたいこと、何なんだよ!」

 強められた旭飛の最後の言葉に、ガツンと脳みそを叩かれたような衝撃を受けた。
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