クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 ダイニングへ向かうと、祐駕くんはテーブルの上に懐かしいものを並べていてくれた。

「これ、ライベクーヘン?」
「ああ。こっちは、シャンピニョンだ。思い出のものを二人で食べて、仲直り出来たらと思ったんだ」

 祐駕くんは言いながら頬を染める。そんなところも、愛しいと思ってしまう。
 私はさっそく席につき、祐駕くんの作ってくれたクリスマスマーケットの味を堪能した。

 そして、食後。祐駕くんがあの日に買った、おそろいのカップに入れてくれたホットワインを飲みながら、私は口を開いた。

「私、やっぱり仕事辞めようと思う」

 ニコリと微笑んで言えば、祐駕くんは目を見開く。

「辞めるのか? 駅員の仕事」

 こくりと頷くと、祐駕くんはやっぱり困ったように眉を顰めてしまった。

「祐駕くんが私の負担にならないようにって、真剣に考えてくれてるのは分かる。でもね、私も同じくらい真剣に考えてるんだよ。祐駕くんとの、未来のこと」
「映茉……」

 祐駕くんは私の名を呟き、それでも難しい顔をした。

「俺が映茉に仕事を続けて欲しいと思ったのは、俺の夢のためでもあるんだ」

 祐駕くんはそう言うと、私の瞳に真剣な目を向けた。
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