クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「俺が日本に戻ってきたのは、本格的に人道支援の仕事を始めるためなんだ。今後は国際機関と協力しながら支援の橋渡しをするのが主な仕事になる予定だが、もしかしたら安全とは言い切れない国に行くこともある。だからこそ、映茉には仕事を続けて、日本にいて欲しいと思っていたんだ」

 祐駕くんが私の顔を覗き込むように見つめる。

「それに、駅員の仕事好きだろ? 母の言葉は気にしなくていいからな。俺たちは俺たちのやり方があるし、今の時代女性が仕事で活躍するのも――」
「ううん、そういうわけじゃないの!」

 口早に言う祐駕くんを遮った。

「もちろん、駅員の仕事は好きだよ。でも、やっぱり私は運転士になれなかった、夢に破れた駅員でさ。でもね、今、一番大事にしたいこと、ちゃんと見つけたの。新しい夢ができたの」
「夢?」

 祐駕くんは首をかしげる。そんな祐駕くんの瞳を、しっかりと見た。

「今は祐駕くんと一緒にいることが、――祐駕くんの隣で幸せになることが、私の夢」

 言い切ると、祐駕くんはキョトンとこちらを見つめる。

「祐駕くんの『世界を平和にしたい』っていう夢を、祐駕くんと一緒に叶えたいんだ」
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