クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 翌出勤日。退職の意向を駅長へ伝えると、駅長は早速関係書類を手配してくれた。

「そっか、辞めちゃうのかあ。なんだか寂しいねぇ」
「私も寂しいです。でも、新しい夢を見つけたんです」

 微笑んで言えば、駅長もニコリと微笑み見返してくれる。

「そうか。なら、私も引き止められないな」

 駅長は座っていた椅子をくるりと回して、パソコンの画面をこちらに向けた。

「実は持月さんに、任せたい仕事があったんたけれど。退職は、それが終わってからでいいかな?」
「え?」

 向けられた画面にあったのは、『新型特急車両のお披露目並びに世界環境大臣による視察について』の文字。

「この車両、うちの駅から出発するんだけどね。持月さん、最後の駅員業務に、この車両の運行合図だすの、やってもらえないかな?」
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