クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際０日な私たちの幸せ演技婚〜

　その日、祐駕くんが帰宅すると早速、退職することと請け負った重要な任務を伝えた。

「本当か？　その電車、俺も乗車予定なんだ」

　私の作った夕飯を食べながら、祐駕くんが微笑む。

「ドイツでやってきた環境関係の仕事の残り業務で、今回は日本のホストとして乗車予定だ」

「本当！？」

　ということは、職場で会えるということだ。

　祐駕くんも一緒なら、尚更頑張らないとね！

　そう、思ったのだけれど。

「ああ。それから、エミリアも来日すると思う」
「え？」
「エミリアは今、日本観光局のドイツ事務所にいるんだ。彼女、ずっと映茉に会いたがっていてな。挨拶くらい、してやってほしい」
「あ……、うん、もちろん！」

　彼女の名に、ちょっとだけ胸がざわっとした。でも、大丈夫。祐駕くんの愛は、ちゃんとここにある。

「当日、楽しみだな」
「うん、よろしくね！」

　私たちは互いに笑みを浮かべ合い、食べ終わった食器を片しに立ち上がる。どちらともなく唇が重なって、胸に幸せが広がった。