クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 運転席には、もちろん旭飛が乗っている。
 それが停止位置ぴったりに止まると、運転台から旭飛が降りてきた。

 午後二時十五分。予定時刻ぴったりだ。
 ちょっぴり複雑な気持ちと共に、旭飛に向かって手を挙げた。

 降りてきた添乗員さんたちとも挨拶を交わし、今日の朝明台駅いちばんのイベントに備えた。

 もうすぐ、祐駕くんもここに来る。

 そう思うと、ちょっぴり緊張するけれど、任された仕事はきちんとこなさないと!

 春のうららかな陽気、新型特急車両のお披露目にぴったりの空気の中、私は気持ちをしゃんとさせるため、一度大きく深呼吸をした。

 その時だった。

 ――ガッシャーン!

 駅舎の横、大臣たちの乗る公用車が停まる予定のロータリーの方で、クラッシュ音が響いた。
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