クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 ホーム内が、騒然となる。

 するとすぐ、ホームにいた報道陣が一斉に音のした方へ急ごうとした。
 駅前ロータリーとホームの間には壁があり、ホームからでは何が起きたのか分からないのだ。 

 報道陣たちは階段へ、我先にと駆けだす。

 けれど、改札階には一般客もいる。
 なにより、この全員が一斉に階段を駆けのぼったら危ない!

 私は慌てて階段の向かった。誰よりも先に階段の上に立ち、先へ行こうとする報道陣たちを止めよるため、声を張り上げた。

「皆さん、落ち着いてください! 階段は駆けのぼると危険です。この場で、お待ちください」
「何言ってんだ、大きなニュースだろ絶対に!」
「ここ一番の特大ネタになるかもしれないんだぞ!」

 報道陣たちからのヤジが飛ぶ。それでも、私は声を張る。

「ニュースのネタよりも、皆様の安全の方が大事です! このホームの外には、一般の方も多くいらっしゃいます。誰かがけがをするかもしれない、命を落とすかもしれない。だったら私は、メディアの皆様をここから上にあげることはできません。情報が入るまで、こちらでしばらくお待ちください!」

 冷静に、確実に。
 胸にいるのは、祐駕くんだった。

 祐駕くんがいいと、すごいと言ってくれた鉄道員としての使命を、私は果たさなきゃ!
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