クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 すると報道陣をかき分けて、旭飛も隣へやってくる。

「皆様はこちらでお待ちください。状況が分かり次第、お伝えいたします。また、危険ですので線路には絶対に下りないでください」

 他の添乗員たちも協力してくれて、なんとか必死に報道陣たちを止めた。

 その間にも、駅の外では警察車両や救急車のサイレンが鳴り響いている。階段の上の警察官たちの配置が代わっているのも目撃した。

 なにか、大きな事件があったことは間違いない。

 しばらくして警備員たちが駆けつけ、報道陣の行動が収まってくる。

 解放された私の顔を、旭飛が覗いてきた。

「何か情報、入ってるか?」

 つけていたインカムに指を押し当てるけれど、何も聞こえない。
 首を横に振ると、旭飛は少し顔を歪めた。

「旦那さん、巻き込まれたりとか――」

 言いかけた言葉を、旭飛は飲み込んだ。私が、目を見開いてしまったからだと思う。

「悪い。でも、きっとあの人なら大丈夫だ」

 そう言う旭飛に「そうだよね」と頷いて、不安を隠そうとした。けれど、身体が震え出す。
 その時だった。
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